作者自身も吃音がある小乃おのさんの漫画『きつおんガール』を読みました。
かわいいイラストタッチと大きなコマ割りで読みやすく、30分ほどで一気に読みました。
「うんうん」と頷けるところが各章にあり、吃音者の抱える悩みをわかりやすく描いてくれたなあと思います。
作者・小乃おのさんは、1987年山口県生まれで、3歳半から吃音症状が出始めました。
『きつおんガール』では、幼少期から学生時代を経て、現在は社会福祉士として働くまでの体験がわかりやすく描かれています。
各章の目次は次のとおりです。
『きつおんガール』目次
- ある日、吃音が始まった
- スラスラ話し出せないのは・・・私だけ?
- 伝われ!吃音の感覚
- 目立たず、こっそりと。
- うまく話せない壁
- 私の救世主
- 8分間の卒論発表
- 社会福祉士の私
かわいい絵の漫画なので各章5分もかからず、さらりと読めます。
それでは、皆さんにもお伝えしたい箇所を紹介していきます。
小乃おのさんの吃音のはじまり
小乃さんの吃音は3才半の頃から始まりました。小乃さんの母親にも吃音があったので、彼女に何が起こったかはすぐわかりました。
近年の研究からも、遺伝が吃音の原因のひとつであることがわかっています。
私も父親に軽度の吃音があります。
当時は本人に吃音を意識させないことが吃音を治す近道と言われていました。
小乃さんの母親も、吃音という症状であることを指摘しなかったため、当時3歳半の小乃さんも吃音のことを気にしないでいたそうです。
昭和から平成になったばかりの時代。吃音についての対応や研究も進んでいませんでした。
この頃は子どもの問題は、親とりわけ母親との関わりが原因とされていた時代。
いまではまったく根拠のない決めつけですが、
小乃さんの母親も、相談した医師にそう言われ、ご自身を責めて苦しんだと描かれていました。
お母さんの気持ち、いまならわかる…
小乃おのさんの学生時代
小学生になり、やはり苦痛だったのは音読の時間です。文章の句読点(。や、)で次の人に読む順番を変わる参加型学習法?
まだ自分の順番が来る前に、自分がどこを読むのか数えて予測して、それが発語しにくい言葉から始まる文章だと、
うわあー!読めないよー!!と冷や汗が出て、不安で胸がどきどきするんですよね。
吃音者だったら痛いほど、この気持ちがわかりますよね。
私も咳でごまかしたり、足でリズムをとって発語したりで、なんとか切り抜けていたことを思い出しました。
そのほかにも、どもりそうな言葉があったら脳内で瞬時に別の言葉に置き換えて喋る。
その時間、0コンマ何秒です。
似た意味の言葉なので大筋は伝わるのですが、やはり本当に言いたかった言葉ではないので、微妙に意味合いがずれたり。
私も言葉の言い回しが独特だよねーとか、変わってるね!とよく言われました。
話しにくさは私の体の感覚の一部で、気づいた時からずっと一緒なのだ
『きつおんガール』小乃おの著
深く頷けました。
ある日、小乃さんはクラスメイトの男子になんでそんな喋り方なの?と聞かれます。
咄嗟に、こういう話し方なんだもん!どもりながら返したそうですが、後日先生から吃音があることをクラス会で発表してもいい?と言われ、了承します。
その日の帰りの回で、吃音があること、ゆっくり聞いてほしいことを、先生がみんなに伝えます。
その後、彼女はからかいのない学校生活が送れました。
あとになってわかったことですが、実は年度初めの家庭訪問の度、母親が担任の先生に、娘は吃音があるので言葉が出にくい時があることを伝えていました。
下の記事でも吃音を持つ子の保護者向けに吃音ドクターが書かれた本を紹介しています。小乃さんのお母様はガイドラインを知ってか知らずか、完璧に実践されていましたね。
事前に聞いておけば、からかいがあった時に先生が対応しやすいですし、説明すれば大半のクラスメイトも納得してくれます。
通級指導教室(今でいうことばの教室)も小5〜小6の間、週に1回通っていたそうです。
中学生になると、吃音症状を回避するために、授業で当てられても「わからない」と答えます。回避行動です。
※菊池良和先生著の『吃音の世界』で、この回避行動について学ぶところがありました。
高校生になる頃には言葉の置き換えもうまくなり、症状自体も軽くなってきました。
所属する美術部の部活紹介も舞台上でばっちりやってのけます。
社会福祉士になるべく入学した福祉大学の生活。
充実したキャンパスライフを満喫する傍ら、吃音のことを忘れてファミレスでバイトを始めます。
しかし、お客さんに吃音を笑われたり、同僚にからかわれたりと嫌な思いをします。
私はやっぱり吃音なんだ。と再認識する出来事ですよね。
私も学生時代にカフェでアルバイトをしていました。言いにくいメニュー「たまごサンド」が言えず、「……まごサンド」と言い換えたり、足でダンダン踏み鳴らしながら「たったたたまごサンド!!」と言っていたことを思い出しました。
小乃さんは落ち込みながらも大学の講義を受けますが、そこで吃音というワードが出てきたことから身近に相談者がいることに気がつき、教授にバイトでつらい思いをしたことを相談します。
教養がない人たちねー。教養のある人はそんなことをしないよ
教授はその笑った人たちを一蹴します。小乃さんの気持ちもスーッと晴れました。
その後、バイトでも困った人を察知するアンテナを立てて、接客に生かします。
自信が付いた小乃さんは、どもることも前よりずっと少なくなり、やりやすくなりました。
社会人になった小乃さんの現在
小乃さんは現在、社会福祉士として働いています。
たくさんの人たちの話を聞きながら、多種多様な悩みの解決に向けて制度案内やヘルプ事業の調整をしています。
吃音があっても伝えることができるよ
すべての吃音で悩む人たちにこのことを伝えたい、と『きつおんガール』を書かれました。
まとめ
小乃おのさん著『きつおんガール』は、とてもわかりやすく吃音者の悩みを描いてくれた漫画でした。
各章のおわりに、吃音治療の権威である菊池義和先生のコラムも載っており、医学的見地からも解説してあるので、ためになります。
吃音があっても大丈夫。自分のやりたいことにトライしよう!というメッセージをもらいました。
(吃音当時者の思いがよくわかるので、吃音じゃない人たちにも読んでほしいな~)
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